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「我ながら情けない…。」
そう言いながら、俺は開けっ放しになっていた窓からもう1度夜空を見上げる。
妹は電話を終えた様で、隣の部屋からはテレビの音がとぎれとぎれに漏れ出している。
「晴れた地域では、流星群が見られるでしょう。」
多分そんなことを言っていた。
流れ星と言えば、子供の頃を思い出す。
疑うことを知らない純粋無垢な子供だったあの頃。
流れ星を見るたびに、願いを叶えてもらおうと必死に祈ったっけ。
まあ、もちろん願いなんて叶うことはなかったが。
「3回祈らなくちゃ叶わないんだよ。」
そう言っていた自称豆知識博士の友人、通称「まめ」。
その言葉を鵜呑みして、必死に早口言葉を練習したこともあった。
なんて純粋だったんだろう。
あの一瞬で3回祈るとか到底無理だろ。
荒みきった今の俺の心ではそんな発想しか浮かばない。
懐かしい昔の思い出に耽っていた時、急に視界いっぱいに広がる大量の流れ星。
その光景を目の当たりにした俺は、気が付いた時には手を合わせて願っていた。
「昔の可愛い妹に戻ります様に、両親が仲良くなります様に…。」
不意に思い付いた願いを繰り返してみたが、まだまだ流れ星は流れ続ける。
「えーと…じゃあ…。」
イケメンになります様に、運動神経も良くなりますように、頭が良くなりますように、身長が伸びますように、ついでに視力も良くなりますように、人気者になりますように、モテモテになりますように、あ、出来れば安斎さんが俺を好きになりますように…。
思いつく限りの願いを何度も何度も繰り返す。
ネタが尽きた所で瞳を開くと、空気をよんだかの様に流れ星も消えていった。
「…何やってんだ、俺。」
我に返り、自分のしていた事に恥ずかしさを覚えた俺は、窓を閉じると一番の安らぎ空間、ソウルチャージャー(ベット)へとダイブした。
その日、夢と現を彷徨う意識の中で、俺は何者かの声を聞いた。
光に包まれたその人物はこちらに向かって喋っているようだが、その言葉は上手く聞き取れず、どんどん遠のいていく。
「…!……ね!…契約成立ね。」
必死に聞き取ろうとその光へ手を伸ばすが、迫り来る眠気にそのまま意識を手放した。
そして次の日目覚めると、俺の運命は大きく変わっていたんだ。
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