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2 トイレ騒動
「それじゃあヤマサキさんは『Wow!シグナル』とかも知ってますね?」
208号室の倫子が目をキラキラさせながら言った。彼女は宇宙っ子らしい。
「忘れもしないよ?1977年、ビッグイヤー電波望遠鏡が、スゲー電波を観測したんだ」
「ビッグイヤーってどこにあるんですか?」
「オハイオ州だ」
ヤマサキは漬け物を作ってくれた。サクサクしていてうまい。茄子の形をしているが色は緑色。
最近は白菜がやたら高い!
腎臓が悪い人に食べさせたら駄目らしい。
カリウムの取り過ぎになる。
「名古屋さんって博士はスゴかったなあ?」
僕はあんまり宇宙には興味はない。
その夜、倫子は弓浜絣の作り方を教えてくれた。藍色の地に白抜きの絵絣が映える弓浜絣、横糸だけに絵絣をくくって藍で染め、手仕事で織り上げる。
「上手じゃない?」
「出来るようになったら楽しいよ?」
ヤマサキとトイレで行き合った。
共同トイレ、小便しながら喋る。
「スガノくんはトウモロコシを用いた染色体研究を知ってるかね?」
「バーバラ・マクリントックでしたっけ?」
「少しは興味を持ってくれたようだね?嬉しいよ?」
「80歳のおばーちゃんですよね?」
「DNAの二重螺旋構造を発見した。いわゆる、可動遺伝因子って奴だ」
この人話長いんだよな?
部屋に戻って『姫神』のCDを聴いていた。
神秘的な音色だ。
虫の音が聞こえる。
まだ3月にもなってないのに、鈴虫の声がする。耳でもおかしくなったのだろうか?
詩を書いた。パソコンは怖いからノートに赤いマジックで。
街の風の中 私は立っていた
離れた2人のこと
雲は果てしなく流れゆく
放課後 校庭 握った手
月が満ちては 欠け
月日は果てしなく流れゆく
過ぎし時代 戻ることもない
触れあったことも いつの日にか
1人 旅に出る
歓び 咲ひける あの頃
笑ひけるを、咲ひけるにしてみた。
遊び心は大切だよね?
またオシッコがしたくなって便所へ駆けた!
大便器が詰まってる。
オロオロしているとヤマサキが駆けつけてスッポンで処理してくれた。
「勉強も大切だけど?家事もキチンとやれよ?オヤジさんやお袋さんに教わらなかったか?」
恥ずかしい!
「助けていただいてありがとうございます」
「いいってことよ!」
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