その魔女、甘党につき

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ショコラベリーとは若い女性向けの雑貨屋さんで、ファンシーな雑貨や文房具はもちろんの事、カップル向けのペアルック商品を多数扱っている。 「ペアルックもあるしいいじゃない。中にはシックなデザインもあるみたいよ。あー、私ショコラベリーのお菓子が食べたいわ……」 ショココは物欲しそうに拓人を見る。 「買わないからな!」 「えー、買ってくれたらこのじとじとうじうじジメジメしたお部屋をカラッと快適にしたのになー。七月、八月のうだるような暑さも忘れるくらいとびきり涼しくするのになー」 拓人の部屋には扇風機しかない。ショココは毎年、自分の周りだけを涼しくして快適に過ごしている。それを指をくわえて見ることがないと思うと気持ちは揺れる。 「分かったよ、行ってくるから」 「きゃー♪拓人大好きよ」 ショココはくるくると回った。 「私、ベリーフォンダンがいいわ」 「……はいはい、わかったよ」 リクエストを受けた拓人は財布を持って出かけた。 街を歩くとピンクとブラウンの可愛らしいお店が見えた。ショコラベリーだ。 拓人は深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、ドアを開けた。 「いらっしゃいませー」 店に入ると店員の甘ったるい声が聞こえ、甘ったるい匂いがした。 当たり前だが女子ばかりで居心地が悪い。 (……さっさと買って帰るか。ペアルックは、むこうか) 大きな『ペアルック』という看板を見つけ、それを目指して歩く。 ペアルックコーナーの前には見慣れた人物がいた。 「七海?」 「え!?」 七海は拓人を見ると目を見開いた。 「拓人?なにしてるの?」 七海はどこかバツが悪そうに言う。 「ちょっと頼まれごとで……。七海はどうしてここに?友達と出かけるって言ってなかったか?」 「え?あぁ、なんか急に予定入っちゃったみたいなの。それじゃあね」 「……?またな」 七海はそそくさと店を出た。 (もしかして七海のやつ、ここで記念日になにか買おうとしたとか?他の店でなんか買うか) 拓人はベリーフォンダンとチョコを買って帰った。
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