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翌日、拓人は七海をデートに誘ったが用事があるとの事で断わられた。
部活休みの和寿を遊びに誘ったら彼も用事があるという。
拓人はつまらない気持ちで1日を過ごした。
放課後、和寿はそそくさと教室を出た。七海は友達と少し話してから教室を出ていった。
「七海もよくやるよねー」
「ホントホント、えぐいっしょ」
「私が男だったら立ち直れないなー」
先程まで七海と話してた子達の会話が気になり、拓人は七海をつけることにした。
廊下、昇降口までは七海はひとりで歩いている。
その後もしばらくひとりでいたが曲がり角近くの電柱に、和寿が突っ立っていた。七海は和寿の元へ駆けていく。
「待った?」
「そんな待ってないよ」
和寿は七海を抱き寄せ、七海は和寿にキスをした。それも1度ではない、何度も何度もキスをし、回数を重ねる度に情熱的になる。
「うち誰もいないけどどうする?」
「いく」
和寿の誘いに七海は即答した。
拓人は震える手でスマホを取り出し、ラインを開いた。
七海に『別れようか』と送った。
「もう、誰よこんなときに」
七海は忌々しげにスマホを見ると、嬉しそうにして打ち込み始めた。
その数秒後、七海からメッセージが届いた。
『寂しくなるけど拓人がそうしたいなら……。今まで楽しかったよ、ありがとう』
メッセージを読んで顔を上げると、ふたりは仲睦まじく腕を組んで歩いていた。
拓人は走った。涙を流しながら、自分と和寿を比べながら。
(和寿はしっかり者で自分の意見ちゃんと言えるし、スポーツやってて体格もいい……。気の利いた冗談も言える。それに比べて俺なんか自分の意見そんな言わないし、ひょろっとしてもやしみたいだ……。冗談だって苦手だ)
「誰だって俺なんかより和寿がいいに決まってる……。当り前じゃん、何傷ついてんだ俺は……」
そういう拓人の心には悲しみで出来た大きな氷の塊があった。
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