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拓人は家の中に入って固まる。
(ショココいるんだ……。追い出すか)
拓人が自室に戻るとショココはベッドの上でチョコを食べていた。
「あらあらどうしたの!?」
驚いて拓人の元へ駆け寄るショココ。
「ごめん、今日だけ出てって」
「何言ってるのよバカ!」
ショココは拓人を抱きしめると、額同士をくっつけた。
「そう、そんなことがあったのね……」
ショココは更にぎゅっと抱きしめる。
「人の頭勝手に覗くなよ……」
「だって拓人、聞いても言わないでしょ?ね、拓人。取っておきの魔法、私には絶対使えない魔法をかけてあげるわ。こっち向いてちょうだい」
拓人はショココの言葉を理解できないまま、顔を上げた。
「んんっ!?」
口を口で塞がれ、甘いものが押し込まれる。
「チョコ、レート……?」
「そうよ。目を閉じてゆっくり味わってみなさい」
ショココは再び、優しく拓人を抱きしめた。
ショココの体温とチョコレートの甘さで心の氷が少しずつ、溶けていく。
「つらい時は甘いもの食べて甘えてもいいのよ?拓人は頑張りすぎるのよ」
ショココの言葉がじんわり染み、拓人は泣いた。声を上げて幼子の様に。
そして泣きつかれて眠ってしまった。
数時間後、気がつくと拓人はベッドの上にいた。すぐ近くにはショココの寝顔。
(なんかすげぇ救われたな……)
ショココの寝顔を見て拓人は思考をゆっくり回す。
なんとなく、ショココが以前言った言葉が分かった気がした。
『甘いものが苦手なのは強い証拠ね。……それとも経験が足りないのかしら?』
拓人の短い人生、人と深く関わることは少なかった。人間関係で傷つくのは今回初めてかもしれない。
自分に価値を見い出せず、自分をないがしろにしていたがたまには自分を甘やかしてもいいんじゃないかと思えた。
拓人は不思議な同居人の寝顔を見ながら、彼女をスイーツバイキングに連れていこうと計画を立て始めた。
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