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かず宅の同居人、隣家の飼い猫、銀。
このシブい名前の由来は、銀色というか灰色の、アメリカンショートヘアーの雑種ならではの毛並。
……ではないのだ、実は。
彼が隣家にもらわれて来た時、命名候補の筆頭は『タマ』だった。
しかしすぐご近所にも、自由に外を闊歩するトラの飼い猫がいた。その名も『キン』。
『キン』『タマ』コンビはマズイだろう、という下世話な事情で、命名変更を余儀なくされたらしい。
それでも、2匹で仲良くしてほしいという願いが大きかった隣家では、当時人気だったご長寿双子にあやかって『銀』と命名、『キン』『ギン』コンビの誕生となった訳である。
とりあえず、隣家の命名センスは絶妙だと言っておこう。
銀は、オスではあるがニューハーフである。
去勢するとオス猫はおとなしくなると言うが、彼はまるで逆だった。
去勢前、彼はおとなしいと言うより、生気の感じられない猫だった。
まだ若いのに、いつも寝てばかり。
当時まだ小さかった隣家の孫達が、彼の脇を抱えて引きずりながら遊んでいたが、それでも眠そうな目をして、されるがままに引きずられている猫だった。
そんな穏やかな猫が、去勢して豹変した。
急に活動的になり、気性が荒くなった。
外を駆け回り、小動物を追いかけ、野良猫に喧嘩をふっかける。
ただし弱いのでいつも傷だらけである。
ふと凶暴になって、何か気に入らないことがあると、本気で人間に噛みつく。
甘噛みではない。本気である。
慣れてくると、凶暴化する前の、彼の不穏なオーラが察知できるようになる。
……来る!!
身構える、かず!
が、大抵一瞬遅く、足首に噛みつかれる!
イッテェーっっ!!
こっちも本気で銀の頭を殴って追い出す!
猫の歯は雑菌だらけだ。かずはこれで何度足首を腫らしたか解らない。
それでもまた、彼はそ知らぬ顔でかず宅にやって来る。
かずも10㎝の戸の隙間を閉じようとはしないのである。
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