腐っても我が家

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世帯主、かず。40歳(当時)。 性別、女。 職業、公務員。 結婚、履歴なし。 彼女が一人で暮らす家は、山口県の瀬戸内海に面した、とある街の外れにある。 変人の呼び声も高いズボラな彼女の家は、その名に違わぬ草ボーボー、人呼んで 『🌕🌕地区のオバケ屋敷』 固定資産税評価額わずか77万円、既に減価償却しきった、築40年余りの、木造平屋一戸建てである。 郊外の一軒家、動物を飼うには最適とも言える環境だが、彼女は何も飼ってはいない。 依頼は時々来る。 「ウチの猫が子供産んだんだけど、もらってくれない? 一軒家だったよね? かずんちって」 しかしその依頼は、大抵の場合、すぐに前言撤回される。 「あ、やっぱやめとく!! アンタんちじゃ、猫ちゃん餓死しそう」 かずは動物嫌いではない。いや、むしろ好きだと言っていい。 ただし『好きで好きでたまらない』というような熱い思いがある訳ではない。 子供の頃から、ただ自然に、当たり前のように、色んな生き物たちはそこにいた。 呼吸をするように、生き物と触れ合ってきた経験が、かずの根底にはある。 ――が。 そう、自分の食事の面倒もロクに見られず、外食とカ🌕リーメイトに頼り、家には寝に帰るだけ。 家は開けっ放しでほとんど空き家状態にしている彼女に、 責任持って動物を飼う気概など、あるハズもない。 来る者拒まず、去る者追わず。 これが彼女のスタンスである。 そんな彼女は、奥まって、判りづらい家の立地をいいことに、施錠どころか、戸を閉めることさえせずにホイホイと出かける。 当然誰でも出入り自由。 それは人間だけの話ではない。 『来る者拒まず去る者追わず』を地でいく、こんな家に、 我が物顔で同居するのは、隣家の飼い猫。 お互いに何のしがらみもない、他人ならではの同居生活を描いた、これはドキュメンタリー風短編である。 さてさて、何が飛び出すか。 さあ、どうぞ。 ページの向こうの非凡な、でもちょっと素敵な日常へ。
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