傍若無人な同居人

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真夜中。かず宅。 苦しい。 身体がベッドに縛りつけられているようだ。 重い圧迫感で次第に眠りから覚める、かず。 まさか……これが噂の金縛り!? 負けてなるものかと、カッと瞼を開いた彼女の目に映ったのは。 窓から差し込む月明かりの中、掛け布団の胸元の上に、こんもりと盛り上がった銀色のシルエット。 「お前か……銀」 金縛りの原因は、胸の上に居座る隣家の飼い猫、銀(♂)だった。 アメリカンショートヘアーの雑種である。 野良猫すらも自由に出入りするかず宅であるから、近所の飼い猫は言わずもがな。 中でも彼はもはや同居していると言っても過言ではない。 隣家は猫を5匹も飼っている。 5匹もいれば、猫どうし、どうやら色々とあるらしく、 他猫と折り合いの悪い彼は、かず宅に入り浸りなのである。 隣家は基本、屋内飼いである。が、微妙な人間関係もとい猫関係を考慮して、彼にだけは外出を許可しているのだ。 いつも我が物顔でかず宅に出入りし、自宅にいるよりよっぽど長い時間を、かず宅で過ごしている。 だからといって、所詮かずがこまめに面倒を見る訳ではない。 ただ、真夜中でもいつも戸を10㎝開けて、自由に出入りさせているだけの間柄である。 猫トイレを設置する気もなければ、食べ物を与えることもない。 まあ食べ物じたいがかず宅には存在しないのだが。 冷蔵庫に飲み物と調味料と乾電池しか入っていないことは、隣家にまで知れ渡った事実である。 従って彼は、メシ時になるとふいっと自宅へ戻って行く。 もよおせば、ふいっと外へ出て行く。決して家内で粗相をしたりはしない。 他人な関係ではあるが、居心地のいい別宅への礼儀はわきまえた奴でなのである。 ただし!! それはあくまで『かず宅』に対しての礼儀であり、かず本人へのものではない。
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