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一人暮らしには大きめの3LDK。清潔感のあるキッチンで、城山は手際良く料理をテーブルに運ぶ。シンプルなランチョンマットが二つ。その上を夕食が彩っていく。
その動作は絵になる可憐さを纏うが、違和感が一つだけ。
配膳主の城山は、御歳五十歳のサラリーマン。良い年齢のおじさんがエプロン姿で歩き回るのは、何とも言えない雰囲気を醸し出している。
「ただいま戻りました」
「ああ、おかえり」
扉が開き、キッチンに現れたのは三十代半ばのスーツ姿の男性会社員。毎日駅ですれ違いそうな、ごく普通の格好と平凡な容姿。
男は夕食の並んだテーブルを見るなり、ランチョンマットの前に着席する。
「落合くん、食べようか」
「そうしましょう。城山さん」
テーブルを挟んで座る、男性二人。
今宵も不可思議な食卓が、静かに始まろうとしている。
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