ビジネス同居

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「最近、一人暮らしをする中高年の、引きこもりや鬱病が増えているそうだ」 「また唐突ですね」 「その理由の一つに孤独が上げられる。同い年は既婚者で家庭を持つ者ばかり。職場でも居場所が見いだせず、一人で悩む者が多いそうだ」  「そうなんですか」 「そこで、この事業だ。高齢者だけでなく、中高年にも対象を広げようと今計画をしている」 「そうなんですね」 「売り出す前に、中高年に効果があるのか、企画チームが検証したがっていてね。君が対象に選ばれたのだよ」  城山は独身だ。この歳で役職はなく、仕事はルーチンワーク。若手社員からは陰で「人生終了No.1」と汚名を着せられる日々。だからと言って、転職しようにも年齢がそれを許さない。  雇ってもらえるだけで、ありがたい。そう言い聞かせてきたが、やはり上司からも、そういう社員だと思われているのか。  悔しいというより、悲しい。  何を思っても城山に拒否権はなく。この呼び出しは、本人の意志確認ではなく、決定事項の復唱を部長がしているだけなのだ。下手に歯向かい、首を切られてはかなわない。  城山は二つ返事で承諾した。
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