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「城山さん、ぼうっとしてますね。食べないんですか」
「ああ、食べるよ」
本日の献立は、牛モモロースのローストビーフ風、なばなのわさび醤油和え、きんぴらごぼう。
牛モモロースは本日特売のため購入。煮込むか悩んだが、焼くことにした。
肉に塩胡椒とブラックペッパーを振り、フライパンで表面に焼き色をつける。その後、コンロのグリル機能で両面を六分ずつ炙るだけ。お手軽だ。
簡単調理で、切り目はローストビーフのよう。食べると牛肉特有の堅さはなく、程よい噛み心地で柔らかい。極上の一品だ。
なばなは辛子で和えても上手いが、今日はわさびで。さっと茹でた美しい緑が、一足先に春を教えてくれる。
きんぴらごぼうは自信作。味付けはみりんと醤油と七味を少々。ぴりりと辛くも優しい刺激が、ごぼうの歯応えとよく合う。
城山は心の中で自画自賛しながら、自身の料理を味わった。
「何かありましたか」
落合がおもむろに口を開く。ぼんやりしていた城山を気遣ったのだろう。
「ああ、いや、何もないよ。落合くんはどうだい」
「何もありません。普段通りです」
綺麗に盛られた料理を口に運びながら、落合は返答する。
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