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共に夕食を食べるのが決まり。そのため、相手の食事が終わるのを待っているのだ。
居心地の悪さを感じながら、城山は箸を進める。
カチャカチャと、食器の擦れる音が単調に響く。
「城山さん」
「は、はい」
「すみません。先ほどの言葉、訂正します」
ぺこりと頭を下げる落合。勤勉そうな、かっちりとした礼だった。
「今城山さんが料理人を目指したら困ります。この美味しい夕食を食べる機会が、減ってしまうかもしれません。僕は、毎日城山さんの食事が楽しみなんですよ」
城山は目尻を下げて答える。
「ありがとう。お世辞でも嬉しいよ。でも、もし料理人になっても、夕飯はいつも通り作れるさ。大丈夫だよ」
「いえ。帰宅が遅くなり、難しくなります。きっと」
大きな夢は見れなくとも、自分のささやかな行いが、誰かのために役立つのなら。
そういう人生も、悪くない。
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