夏 素麺はアレンジ次第で案外化けます

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「流しそうめん大会ぃ?なにそれ、やりたい。おれっちスッゲェやりたい」 仕事帰りに静電気の精霊と一杯ひっかけた帰り、アパートの入り口に貼ってあったチラシを見て静電気の精霊はパチパチと興奮してお疲れ気味な火の粉さんの肩を揺らした。 『 流しそうめん大会 開催日 あさって 木霊荘毎年名物、ながしそうめん大会の開催を お知られします。参加希望の方は管理人木霊までお伝えください。』 管理人の木霊さんは、神出鬼没な老婦人で、楽しいことが大好きなのだ。きっと木霊さんは唐突に流しそうめんがやりたくなったのだろう。 火の粉さんは遠い目をして空を見上げて突っ込んだ 木霊さん、名物でも毎年開催でもないです。去年は遠泳大会でした。と。 「なぁあー火の粉ーーーやろうぜやろうぜ!申請はおれっちがやっとくからさぁ!ほらお前んとこの噂の美人さんの分もやっとくからさ!」 ゆらゆら、パチパチ、ゆらゆら、パチパチ 「ああー、揺らすな揺らすなぁー静電気の兄ぃさん痛いから、マジでいたい」 「なぁああーー美人が見たい!美人とそーめん食いたい!!」 こっちが本音なんだろうなぁと、ゆらゆら揺れながら火の粉はため息をついた。 「.........ヴっ」 「どした?火の粉の旦那」 「やばい......出る.....」 出るって何が? そう、あのキラキラと空を舞うあまり見たくないものさ。 そういう事でその夜、アパートの入り口で静電気の精霊の悲鳴が鳴り響いたとかないとかいう噂が立った。
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