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火粉さんのお仕事は文字通り火の粉を出す事だ。
たとえば、街のドワーフのおっちゃんが、あっつあつの鉄にかつんかつんと叩く時に出る火の粉だったり。
冒険者の魔法使いたちが放つ火の魔法にちょっと火の粉を添えてみたり。
時には、ちょっと悲しいけど火事の原因になったりするのが仕事だ。
時々、冒険者のお手伝いをする先輩精霊や力の強い精霊たちが羨ましいわけではないけど、力が弱くのんびり過ごしたい自分にとっては十分満足いく仕事だと思う。
そして、ほかの火の粉の精霊が来たら交代で精霊界に帰った後、行きつけの酒場で一杯引っ掛けるもなかなかに楽しい。
「よう、火の粉の旦那。今日も元気にパチパチいってんな 」
「やあやあ、静電気のお兄さん。今日も楽しそうにバチバチ鳴っているね」
酒場で一人で飲んでいれば、いつも声をかけてくれる友人がバチリと電気を散らして楽しそうに笑った。
「よせやい、そんなにバチバチ鳴ってねえよ。残念ながらな。木精のおっちゃん、おいらにも樹液酒一つ 」
「あいよ 、ほら今日のも美味いぞ」
どんと置かれたのは、この店の人気メニュー、樹液酒。木精である店主が絞り出した樹液を店員の水滴の精霊と微風の精霊が丁寧に醸造した逸品だ。
「かぁーー!!!やっぱり仕事終わりはこれに限るぜ 」
「うんうん、これが無いとやってられないね」
同意するように頷いていれば、突然がしりと肩を組まれた。興奮しているのか、周辺をバチりバチりと弾ける小さな雷が少し痛い。
「どうしたの静電気のおにーさん」
「なあなあ、火の粉の精霊の旦那ぁ。みずくせぇじゃねえか、なんで教えてくれなかったんだよ」
「ええ、何を?」
そして、火の粉の精霊は続いた言葉にぴしりと固まった。
お前さん、精霊アパートで飛びっきりの美女と同居してるっていうじゃねえか。
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