181人が本棚に入れています
本棚に追加
【始めに】 紙芝居語りより
さぁさぁ、よってらっしゃいみてらっしゃい。
楽しい楽しい紙芝居が始まるよ。
そこの可愛いお嬢ちゃん、そこのハナタレ坊主達。もっと近くによっておいでな。おぉ!そこのアンタも見ていってくれよ!
なぁに、お代は結構だからよ。
物語の始まりの舞台はブランゲールという街さ。今日も夜の沈黙に支配されたこの街に、爛々と月光が降り注いでいる。
窓から見える子供達のスヤスヤと眠る顔。屋上の猫たちの大きなあくび。羽虫が群がる古びた街灯。人間のゴミをあさるネズミども。
そんな街に赤いシルエットの少女が一人。
コツコツコツ……。
街灯と月光に照らされた街道を歩いている。
え?夜に女の子一人は危ないって?
確かにそうだね。お嬢ちゃん。まぁ、普通ならそうだろうねぇ。誰かに襲われたりしたら大変だからだろ?
でも、違うんだな。これが。
危ないのはその子の周りさ。
何?よくわからないって?
そんなのは最後まで聞いてくれればわかることよ……。
最初のコメントを投稿しよう!