【始めに】 紙芝居語りより

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【始めに】 紙芝居語りより

 さぁさぁ、よってらっしゃいみてらっしゃい。    楽しい楽しい紙芝居が始まるよ。  そこの可愛いお嬢ちゃん、そこのハナタレ坊主達。もっと近くによっておいでな。おぉ!そこのアンタも見ていってくれよ!  なぁに、お代は結構だからよ。  物語の始まりの舞台はブランゲールという街さ。今日も夜の沈黙に支配されたこの街に、爛々と月光が降り注いでいる。  窓から見える子供達のスヤスヤと眠る顔。屋上の猫たちの大きなあくび。羽虫が群がる古びた街灯。人間のゴミをあさるネズミども。  そんな街に赤いシルエットの少女が一人。 コツコツコツ……。  街灯と月光に照らされた街道を歩いている。  え?夜に女の子一人は危ないって?  確かにそうだね。お嬢ちゃん。まぁ、普通ならそうだろうねぇ。誰かに襲われたりしたら大変だからだろ?  でも、違うんだな。これが。  危ないのはその子の周りさ。  何?よくわからないって?  そんなのは最後まで聞いてくれればわかることよ……。
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