そのマラ最低故に…

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最後の曲が終わると、楽屋と出口に繋がる通路にでて、端でコンパクトに座り込んだ。 楽屋の入口を見ているとモヒカン頭の男性が出てきた。彼のバンドのドラマーだ。 続いて私の渡したハンカチで額の傷を押さえながら彼が出てきた。 「血がとまんねえぞ…」 すると年の頃は彼らと同世代であろう40代半ばから後半ぐらいの女性数名が彼らに群がった。 いいなぁ…パンク世代じゃん。アタシは20年程生まれるのが遅かったと、いつも嘆いている。 元彼もそうだけど、同世代の友達とは音楽の趣味は合わなかった。 よってライブハウスには一人で出向く事が多かった。 今回、ライブハウスに来るのも随分久しぶりな気がする。 彼は通路でしゃがんでいる私を見つけると近づいてきた。 「よお…お待たせ。」 私は慌てて立った。 「あっ……はい。」 「あれ?珍しいな…伸二のファンにしちゃあ若いなぁ。この熟女キラーが…ガハハハッ。」 ドラムスのモヒカンが彼の背中んバシバシ叩いて笑っている。 へぇ、シンジって言うのか…熟女にモテるんだ、成る程… 私は先程彼に群がっていたファンを一瞥した。 「んー?ファンなのは俺なんだよ。」 私はシンジに肩を軽く抱かれた。 その時のシンジのファンであろう熟女のお姉さん方の私を見る顔が怖かった。 本当に人気があるんだ… そんな人気者に気に入られて、私は悪い気がしなかった。 「んじゃ、行くぞ。」 シンジは私の手を取ると出口に向かう。 私は痛い視線を感じながらライブハウスをあとにした。 「打ち上げどこなんですか?」 「打ち上げはここでやる…あと敬語はやめてくれ。」 「あっ…はい…じゃなくて、うん。打ち上げ…は?」 「ふける!!」 彼は少年の様な笑顔で答えた。 
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