雪夜行

1/12
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

雪夜行

 ガタン、と車体が揺れた反動で目を覚ます。窓の外を見ると、辺りは真っ暗だった。山間を走っているのか、光源が一切見当たらない。列車が発する明かりが周囲を白く照らす。  夕方に飛び乗った特急列車は名古屋を出て、金沢に向かっていた。寒い日が続いたものの、今年はまだ、名古屋には雪が降っていない。けれど、今通過している地域は雪深く、いよいよ目的地に近づいているのだという気がして、私は身を振舞わせた。  母危篤の知らせを受け、急きょ金沢に向かうことになったため、荷物は最低限しか持ってきていない。会社を早退してから慌てて用意したものだから、忘れ物のひとつやふたつあるに違いない。昔から、私は忘れん坊で、母にもよく叱られたものだ。  腕時計で時間を確認すると、七時を過ぎたところだった。金沢駅に到着する頃には九時を回っているかもしれない。危篤を知らせてくれた従姉に、到着時刻をメールで伝える。すぐに返信があり、今夜が山かもしれないとあった。     
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!