雪夜行

10/12

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 とある冬の日、二人は駆け落ちをする約束をしていた。そのことを知った母が、姉がいなくなることを恐れ、両親に告げてしまったのだ。「菊姉ちゃん」は家に閉じ込められたまま、約束の日を迎えた。  食事を拒み、憔悴しきった「菊姉ちゃん」の姿に、母は自分がしでかしたことの大きさを悟った。大好きな「菊姉ちゃん」がどこかに行ってしまうのは嫌だけれど、自分のせいでやつれていくのはもっと嫌だったのだろう。母は両親の目を盗み、「菊姉ちゃん」を家から抜け出させたそうだ。  それが伯父にばれ、両親に気づかれる前に連れ戻そうという話になった。母は必死で伯父に縋り、「菊姉ちゃん」の望みを叶えてほしいと請うた。けれど、駆け落ちしたとなれば、外聞が悪い。周囲の目もある。伯父は母を振りきり、降りしきる雪の中を飛び出して行った。母もそれに続いた。  二手に分かれた先で、母は「菊姉ちゃん」を見つけた。そして、「菊姉ちゃん」の細い首には、縄がかかっていた。 「でも、でもね、本当は殺されたらしいの。相手の男に、首を絞められて。おばちゃんはそれを目撃しちゃったみたい」  あとから駆けつけた伯父が見つけたのは、木にぶら下がる実姉と気絶した妹の姿だった。母は高熱を出し、完治する頃にはすべて終わっていた。自殺では外聞が悪いと「菊姉ちゃん」は病死にされ、高熱のせいか母は自分が見聞きしたものを忘れていた。     
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加