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葬儀の手配は従姉に任せきりで、名ばかりの喪主である私は申し訳なく思った。改めて礼を言うと、「父のときはもっと大変だったのよ」といたずらっぽく笑った。
「仕事仲間だの釣り仲間だの、弔問客が多くて、おちおち食事もしていられなかったわ」
それを聞いて、私はますます身の置き所がなくなった。伯父の葬儀に参列したとき、喪主を務めた従姉はくるくると動き回っていて、大変そうだなあとしか思わなかった。手伝えばよかったと反省しても後の祭りである。
「たっちゃん、そういうところ、相変わらずよね」
昔から気が利かない従弟に、彼女は呆れながら笑った。施設に顔を出して母の様子を気にかけてくれたことや、最期を看取ってくれたことに礼を言うと、「いいのよ」と返された。
「父も母も亡くなっちゃったし、出戻りで子どももいないから、肉親といえばおばちゃんだけだったからね。おばちゃんはわたしのこと、姪だとわからなくなっていたけど、時々顔を見せておしゃべりするの、楽しかったわよ。それにね、施設に入ってから、おばちゃん、明るくなったのよ」
私は俄かに信じられなかった。いつも陰鬱そうに黙っている母の顔しか記憶になかったので、明るくなったと言われても、なかなか想像し難かった。
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