吾輩は腐女子である。

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 我が輩は、腐女子である。  名前はーー神林美貴(かんばやしみき)。  美しいに貴いと書いて美貴。親がこの世に誕生した私を見て、なぜこの名前をつけたのかは分からない。女の子に生まれたのだから美しく、高貴な女性に育つようにとでも願ったのだろうか。  両親の願いも虚しく、私は容姿に恵まれなかった。  腫れぼったい一重に、明太子のような主張の激しい唇。肌は白くてツヤツヤとしている方だが、いかんせんパーツが残念なのだ。まるで古典の教科書に載っているような平安貴族を思わせる容姿に私は育った。  むしろ平安貴族のように、艶やかで美しい黒髪を持ち合わせていたのなら、まだ「日本的な容姿」という分類に食い込めたかもしれない。あいにく私の髪は、プラスチックの箒のように太く固く量が多い。しかも所々白髪が混じっている。  しかし私は自分の容姿を悲観しない。いや、悲観しないというより気にしている暇がないと言った方が正しい。  高校二年生ともなると、女子という生き物は大半が自分の容姿をどれだけよりよく見せるかに時間を費やすものだ。しかし私にはクラスメイトと同じように、自分の髪を丁寧にアイロンで真っ直ぐに伸ばしたり、腫れぼったい一重をのりでくっつけて二重に偽造したりする時間が無いのだ。  なぜなら、私には趣味がある。  全身全霊をかけ、何よりも誰よりもむしろ自分よりも愛しているものがある。私はそれを愛することに、時間をかけ、お金をかけ、人生をかけている。  その趣味とはーーボーイズラブ。  私、神林美貴は、腐女子である。
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