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ネコは、一度大きく欠伸をし、眠たそうな目でこちらを見た。今の動作は、まるで人間のそれに似ていたが、どうなんだろう。猫もそういった動作をするんだろうか。手で目を擦る事はあっても、まさか、欠伸をするのに手を覆う事はるのだろうか。
そんなことを考えていると。その猫は驚きの目でこちらを見、
「佐伯!」
そう言った。そう叫んだのだ。
「は?!」
いや、どうして猫が喋るんだよ。普通喋る訳がないだろ。
そんな風に驚いていると、猫の目から大粒の涙が零れはじめる。
「良かった!良かったよ~、ずっと、こんなふうなのかと思って、私、私……」
ちょっと、冷静になるチャンスをくれないか。少しだけでも整理するくらい駄目なんだろうか。駄目なのかなぁ。
すこし、本当に落ち着かせて。
持っている猫を横にそっと置くと、立ち上る。ちょっとズボンの中にも砂が入っちゃって、待って、パンツの中にも入っているわ。
まー、いいか?いいよな。見てるのはどうせ、猫だし。
ボロボロのベルトを外し、ズボンを下げる。なぜか視線を感じるが、大丈夫……のはず。
トランクスを少しずらした所で、揺らすと、思った以上の砂と悲鳴が聞こえた。
「きゃっ!」
トランクスとズボンをはき直すと、足元を見る。恥ずかしそうに両手で顔を伏せている猫がそこにはいた。
正直、何にも考えたくねーな。
腰を降ろし、膝を地面につけ猫を見る。ふと、向こうもこちらに視線を向ける。が、また、「きゃっ」と言って顔を隠す。
・・・・・・・・・冷静になれ、俺。こんな所に居て混乱しているんだ。だから、こんな変な喋る猫さえ幻を見てしまうんだよ。だから、コイツに付き合えば、多分状況を整理できて、コイツも消えるだろ。
「…………ふぅ。なぁ、ここは何処だか、分かったりする?」
いや、なに質問してんだよ。-幻に質問なんかしても帰ってくる訳ないのに。
「ドイツだよ」
「は?」
「ドイツ北部。まぁ、ここら辺はもう半世紀辺りで砂漠化しちゃったけれど、たしかにドイツだよ?……って、知ってるはずでしょ?!、もー!目が覚めたばっかりでいろいろ忘れちゃったかな?」
「え?あ、あーー。そーだな」
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