一話:砂漠の未死体

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そして、あと何時間かかるか分からない道なき砂漠を歩く。  ふと思ったけど、あのまま無視していたら、動物保護愛団体とか、なんやらに叱られるのだろうか。まぁ、喋る猫とかノーカンでしょ。 「いいの?」 「じゃー、降ろすか?」 「やっぱ、なんでもないです」  疲れたという事はないんだけど、どうも会話がない。暇という事じゃないんだけど、このままじゃ、暇になってしまいそうだな。  ……………それはそうと、覚め無くね?  何時になったら、夢から覚めるんだよ。おかしいな、ある訳がないドイツの砂漠に、喋る猫。極めつけは、なかなか疲れない身体。  覚めねーなー。  そんな事を思い、腕を組んで、悩むふりをしてみる。  あれ、そういえば、砂漠に埋もれてた時、何か考えてたような思い出そうとしたような気がするけど……なんだっけ。  まー、どうせ、夢なんだから関係ないけど。  ふと、一つ諦めて前進しようとした、その時だった。  前方の方から小さくはあるが、エンジン音が聞こえてきた。何事かと、歩き出そうとした足を止め、こちらに来るであろうその音の正体を待った。 音はさらに大きく、多くなっていく。 しばらく、オレと一匹は前から来るそれを睨みつけるようにして待ち、そして、それは数分と待たずにこちらに着いた。 それは、本当に自衛隊とかういうようなところで走る高機動車だった。横には正六角形で真ん中には丸のマークが付いており、対角線に区切られたそれは左上の三角形が赤く染まっていた。 それが、何台も、別の種類の車と連なって走っている。途中、エンジン音に交じって声も聞こえたが、日本語っぽくない感じだった。  ふと、なかなか鮮明な夢だなー、と走っていく様を見ていると、一台の車が止まった。  ドアが開き、一人の背の高い赤い服を着た男性が出て来る。左胸には先程の高機動車と同じマークが。  オレは、「あっ」と、驚き一言。 「こ、こんにちは……」  と少し笑った表所をこめ、頭に手を添えて言った時、イヤ、正確には言い終えようとしたその時だった。
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