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オレの頬を、一瞬、何か鋭い物が通り過ぎた。
目を見開いてみると、男性の手には一丁の拳銃が。
「Wo du herkommst.| Wenn Sie es nicht bald erzahlen, werden Sie schiesen《早く言わないと撃つぞ》」
え?なんて言った?
俺は、言葉の意味を理解できず、その場に立ちすくむ。
そして、何か言おうと両手を動かそうとした、その時、「動かないで」と頭の上に乗っている猫が何時の間には肩の上にギリギリに乗っていて、そう耳打ちした。
「とりあえず、私の言うように言って『誰か、伊和語の分かる人はいませんか』って、大きな声でね」
猫の言うとおり、少し震えながらになってしまったが、そう今できる最大の声で叫ぶように言った。
「だ、誰か!、い、伊和語の分かる人はいませんか!?」
勢い任せで言い放ったその言葉は、一発の銃弾に否定された。
そして、その一発は、自分が夢を見ているのではないと。これは現実であるのだと思わされた。
左手で、自分の腹を触った。最初は少しばかり痛いと思っていた横腹は、それが拳銃により傷つけられた痛みだと悟った瞬間、痛みを増していった。
「くあぁ・・・・・・・・いってぇえええええ!!!」
その場に、腹を抱え膝をついてしまう。その衝撃で、肩の上にギリギリの体勢で乗っていた猫もコテリと可愛く落ちて行った。
しかし、俺としては、痛みはそんな可愛い物ではなかった。
「|Aus Wortern scheint es auf Italienisch zu sein?《言葉からすると、伊和語のようだが?》Wer bist du? 」
そう言い、より一層、銃口をこちらに近づける。そして、今度は外さないとでこに押し付ける。
訳が分からなくなって走り出した。街の方に、無我夢中で。必死になって。猫を抱えて。
走った。だが、後ろから背中に一通の痛みが走る。背中に走った痛みは胸に貫通して自分より早く走って行った。
血が見えた。血が、自分の胸から吐き出るように出る。
勢いよく転がるように、転倒して砂漠に真っ赤な血を染み渡らせる。それは、自分の頬の腹と胸から出て来る血だけではなく、そこから、吐血して出てきた血も少なからずあった。
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