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半年ほど前だった。
雨の中、俺は轢き逃げに遭い身動きが取れなくなっていた。
その時、俺を助けてくれたのが今の同居人・春樹だ。
大学生の春樹は俺に暖かな寝床と食事を無償で提供してくれた。とんだお人好しである。
事故の後遺症は特になく、俺はすっかり元気を取り戻していた。
それでも春樹のもとを離れられなくなってしまったのは『情』ってやつだろうか。
「ナツ、彼女が出来たんだ。今度紹介するよ」
それは突然の告白だった。
びっくりして固まっていると
「ナツにはちゃんと会ってもらいたいんだ」
と笑顔を見せた。
俺は複雑だった。
このままこの家に居てもいいのだろうか。彼女ともなれば俺は邪魔になるのではないか?
あまりに心地よくて長く居すぎたが、そろそろ出て行く時が来たのかもしれない。
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