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雨が降っている。
春樹と出会った日も雨だった。
出て行くのは雨の日にしようと決めていた。なんとなく、雨が悲しみを半分洗い流してくれるのではないかと思ったのだ。
週末なのでそろそろさくらが来る。そしたら家を出よう。
行くあてはないが、どうにかなるだろう。今までだってそうやって生きてきた。
ガチャ……
玄関のドアが開く。
「あれ? ナツ……!!」
さくらが両手に買い物袋を抱えて入って来る横をすり抜けて、俺は思い出の詰まった部屋を後にした。
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