本編第一部〈4〉

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ちなみに本編ではここで、二条が西行に憧れている記述をしました。それ自体は創作ですが憧れていたのは本当です。 西行は秀郷流武家藤原氏の出自で、1137年頃に鳥羽院の北面武士を勤めた美男でした。 が一説によると鳥羽天皇の中宮・待賢門院(たいけんもんいん)かもしくは、同じく・鳥羽天皇寵妃の藤原得子(ふじわら のなりこ)(=美福門院(びふくもんいん))への失恋がきっかけで、無慈悲に妻子を捨てて世捨て人になったそうな。   そこだけ聞くと、なんかめちゃくちゃな人ですよね。……私は若い頃の西行はちょっとサイコで怖いです(x_x) 歌集も持っているほど和歌に通じた風流人・西行です。歌を詠みながら諸国漫遊する自由な生き方に二条は憧れ、後年それを叶えようとしました。 ↓ 院はそんな二条を強引に連れ戻すことはせず、翌朝ひとりで帰っていきます。 せっかく探し当てたのに野放しにしておくのが不思議だったので、本編では祖母の喪に服したい二条の気持ちを尊重した、としました。 ↓ 「今朝の別れはしみじみと憐れ深いものだった。お前を愛しい」 と熱烈な後朝文が院から届き、二条も、 「わたくしも……」 との思いを歌にのせます。大晦日の迫る物悲しさです。 ↓ 院の仏心はすぐに仇となり、同日夕べには実兼参上。 二条はかなり強く拒んだ……と書いてありますが、本当のところはわかりません(^^; そうこうするうち都合よく吹雪が強くなり、真願房が実兼に気づいて哀れみ、中に引き入れます。 この場面、古典全集では 「潔白なはずの尼が男を引き入れるのに違和感がある。二条の自己弁護による創作か」とあります。 ぶっちゃけ私もその線が濃いと思ってます(本編では原典通りに書いてますが)。
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