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もう一人の人間は、ベッド脇の椅子に腰かけたまま答えた。こちらも、外見年齢は女性と同じくらいだ。青年のようにも見える短い髪と整った顔、それに似合う男性用の服を纏っていた。しかし、実際の性別は女性である。
彼女たちは、ここで二人だけの静かな暮らしをしていた。
「今日も夢で新しい予言を見たよ」
長い髪の女性――ツィツィンが、窓の外を見ながら声をあげた。
「私たちの大陸って、二つの大きな国と、それ以外の小さな国でできてるでしょ? そして、外の世界を知らない。海の先がどうなっているのか、別の大陸があるのかもしれないけど、まだ誰も辿り着いていない。私たちは、この大陸の中だけで生きている」
ツィツィンは静かな声で話している。表情もあまり変わらないので、まるで唇だけが動く人形のようである。
「草原で遊んでいるとね、大きな鳥がやってきて、私は連れ去られてしまう。この大陸の人は誰も知らない、外の世界からやってきた怪鳥なの。それを防ぐための条件は、今日は一日中ベッドの上にいること。そして、お兄ちゃんがずっと私の手を握っていてくれること。守れる?」
そこでツィツィンは、ちらりと視線だけを――椅子に座った男装の人物、リタに向けた。
「もちろんです、姫様」
「本当? おしっこに行きたくなったらどうするの?」
「その時は席を外します」
「やだ。ここで漏らしてよ」
「そういうわけには参りません」
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