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Today is a peaceful day.
朝露に濡れた木々の間を、小鳥が飛んでいる。
深い森を抜けると、そこはぽっかりと広がった草原で、その終わりは海を望む小高い丘になっていた。
その丘の上に、一軒の小屋が建っている。
それは土と煉瓦で作られていた。装飾のない粗末な造りだが、住む人を守るために丈夫に出来ていた。少しずつ劣化した壁や瓦が、それまでの長い年月を物語っていた。
深い森の、広い草原の先。人々から忘れ去られたように、その小屋はぽつんと佇んでいた。小鳥は煙突の上でしばらく休憩していたが、すぐに未練もなさそうに飛び立っていった。
その小屋の中には、二人の人間がいた。
内装は質素だった。台所と、暖炉と、いくつかの家具。一人は、窓に面したベッドの上で上半身を起こしている。
「おはようお兄ちゃん。今日もいい天気だね。とっても気持ちいい」
声は高く澄んでいる。長い髪で、美しい顔をした女性だ。外見年齢は二十歳ほどで、素朴な女性用の衣服を身に着けている。
「それはなによりです、姫様」
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