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「アイシテルって呟くだけで どうしてこう 胸が痛いの」
俺は耳が痛いです。
四角に向かって音を鳴らす美琴ちゃんは、俺たちでいうどんな行動なのか、未だにわからないでいる。
「今日も聴いてくれてありがとう!実は今日...」
不愉快な音で満ちる向こう側も、騒々しくて眩しすぎるこの空間の中でも、俺の寝床は見つかりそうになかった。
キューキョクの選択ではあるが、ここは俺。動じることはない。
渋々ではあるが、ここで体を丸めることにする。
あのくらいの隙間なら自力で閉めることもできるのだが、つい数日前に爪を立てる初歩的ミスを犯してこっぴどく叱られていた。あれはトラウマものだ。
ガンッ
鈍い音。
何事かと思って体を起こしてみれば、白・黒・茶色のまだら模様が確認できた。
あれは金属と肉体がぶつかる音だったらしい。
ヘタクソめ。
どんなにガンを飛ばしても、アイツはどこ吹く風。
その上、こともあろうに俺にくっつくようにして丸くなった。
寝息が聞こえてきたのは、その数秒後。
ナンダ、コイツ。
「実は我が家に新しい家族ができて...」
足音が近づいてくるのを察して、とっさに身を丸めた。
「ユウくんとソラくんでーす。もう仲良く寝ちゃってますが...」
仲良くなってたまるものか。
反論する間もなく、隙間は閉じられてしまった。
カチャリ。
おいおい、嘘だろ。
とりあえず、隣のヤツから暖をとることに全神経を集中させる。
村のボス猫、ユウ。
このときはまだ、こんな生活が何ヶ月も続くことになるとは予想だにしなかったのである。
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