プラネタリウム

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プラネタリウム

 テレビで見た星空の映像に影響され、プラネタリウムに足を向けた。  平日のせいか館内はガラガラで、星空を独り占めしている気分だったが、ふと気づくと、隣の席に女の子が座っていた。  歳は中学生くらいだろうか。  俺は平日休みの仕事だけれど、こんな時間にプラネタリウムにいるなんて、学校はどうしたのだろうと何となく視線を向けていたら、ふいに女の子が俺を見つめてきた。 「ねぇ、あの星から地球までって、どの位距離があるか知ってる?」  女の子が指差す先にあるのは、俺でも知っている、柄杓の形で有名な星座だった。  聞きかじりの知識で答えを口にすると、女の子は凄いと俺を褒めた後、今度は、星座から地球まで輝きが届くのはどれくらいかかるか知っているかと聞いてきた。  さすがにそこまでの知識はなく、知らないと答えた俺に、女の子は途方もなく長い年月を告げた後、再びじっと星の映像を見上げた。 「星の光って不思議だよね。今私達が見ているのは物凄く昔の輝きで、もしかしたらもうその星自体が存在してないこともあるんだから。…私みたいに」  ひそかなつぶやきと同時に女の子の姿が消えた。でも不思議と、俺は何の恐怖も感じなかった。  もう存在してない星の輝きが今地球に届くように、俺もまた、もう存在してない女の子の姿を見かけ、会話をした。  宇宙や自然て凄いよな。  その時はただそう思ったけれど、よくよく考えたら幽霊を見かけ、会話までしてしまったことに俺が震え出すのは、プラネタリウムを離れてからの話だ。 プラネタリウム…完
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