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第2話
その当時、私には高校時代からつきあっている同級生の彼、亮輔がいて遠距離恋愛をしていた。彼は地元仙台から東京の私のマンションにときどき遊びに来てくれたり、こまめに電話をしてくれたりしていた。マメでまじめ。やさしい人だった。
ちょうどその夜も亮輔が上京してきて、一緒にこじんまりとした居酒屋で食事をしていた。
料理を分け合ったりビールを飲みながらのんびり会話を楽しんでいると、亮輔が視線を店の奥へ走らせた。
「あのさ。あの壁際の奥の席の二人、さっきからすごく気になる」
「私の後ろ?」
「入ったときから目立っていたんだけど、言い争いはじめてさ、見てるこっちの方がハラハラするんだけど」
箸をとめると亮輔が小声で囁いた。
「女も男も、ちょっとそのへんにはいない感じ」
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