第14話

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 もっと、もっと、もっと。私の心は何処までも龍を求める。龍を知りたいのに時間がない。 「瑤子」  朦朧とした意識の中、耳に流し込まれた龍の低い声。すぐに反応できず、しばらく身動きが取れなかった。波にさらわれた人がもがいてようやく顔をあげたように、ゆっくり瞼を上げる。視界はぼやけたままで違う世界にいるようだった。    なかなか焦点が合わないことに苛立って何度もまばたきをすると、ようやく龍の顔がみえた。静かな瞳が私を見つめていた。  どこか悲しげにみえるその瞳。そう認識しただけで、体の奥底から甘く焦げるような感情が沸きあがってきて、龍の首に腕かけて引きよせ、彼の唇の自分の唇を重ね合わせた。  そんな瞳で何か言われたら、辛うじて均衡を保っている心が砕け散ってしまいそうで怖かった。  彼は結局何もいわなかった。私の舌を乱暴なくらいの激しさで絡め取る。そして指と指をしっかり絡めて私の両手をぎゅっと握りしめた。
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