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「なに?」
龍がそんな私に気付いて、苦笑しながら聞いてきた。
「以前妹にあったときにも感じたんだけど、龍って真紀の前でも礼儀正しいっていうか好青年だよね。私との初対面のときとは違う」
からかうようにそういうと、龍も得意の、ちょっとだけ意地悪な笑みを浮かべた。
「最初に瑤子と会ったときって、俺の前でいきなり転んだときだろ? あのときも俺、親切にハンカチ貸したよ?」
「親切にっていっても、笑うのを我慢しているのがまるわかりで、失礼な人だなって思ったんだけど」
「あんな転び方を目の前でされたら誰だって笑いそうになるよ? それを気をつかって笑うの我慢してたんだから、失礼どころか、礼儀正しいでしょ?」
「うーん。なんだか納得いかない……」
売り言葉に買い言葉なテンポでこうやって畳み掛けられると、口ごもるのはいつも私だった。
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