夢の余韻

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 彼は私の目線に合わせるためにゆっくりとしゃがみこんだ。ようやくはっきりと龍の顔が見えた。私の大好きな、少年のようないたずらっぽい笑みを浮かべている。 「何をしているの?」  どうにか冷静さを保ってそう尋ねた。 「監禁ごっこ」 「監禁ごっこ? 夜中にどうしてそんなことをしようなんて思ったの?」  まるで母親が子供をたしなめるようにいってしまう。けれど彼は知っている。私が本気で怒ってなどいないことを。  彼は夜のバイトから帰ってきたそのまま姿なのかもしれない。以前よくみた黒のジャケットを着ていて、かなり上機嫌だった。 「飲んでる?」  龍は首を振って私の頬に大きな掌をあてながら顔を近づけた。 「たいして飲んでない。ほぼ素面」  そういって、私の頬にちゅっ、と軽い音をたててキスをした。その部分が軽く熱をもって疼く。発光塗料でも塗られたようにその部分がぼんやりと暗闇の中に浮きあがってしまうようだった。
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