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龍の唇に触れてみたい。それなのに両手は縛られて動かない。確信犯だ。
「飲んでもいないのに、こんな酔狂なこと思いつくなんて。龍、かなりヘン」
強がってそういってみるけれど、龍は機嫌よく微笑むだけ。
「そうだな。ちょっとおかしくなってるかもしれない。自分でもそう思う」
私の心の奥底まで覗きこむような、真剣な眼差しを向けてきた。
「なんだか、さ。瑤子がどこかへ行ってしまいそうな気がして」
微かに湿度を含んだ甘い声。身体の奥のほうから痺れてしまうのを、どうすることもできなかった。
「ありえないよ、そんなの」
私から龍のもとを離れたりするわけがない。
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