740人が本棚に入れています
本棚に追加
/267ページ
「こういう時の瑤子の顔、すげえ好き」
龍は薄暗い部屋にじわりとにじむような微笑みを浮かべた。私の気持ちなんてすぐに見透かされてしまう。隠すことなんてできない。
「龍、だから早く紐を……」
私の言葉は龍の唇に吸い込まれた。ゆっくりと舌が差し入れられる。夢中になってその舌を追いかける。けれどするりとかわされ続けて、途方にくれる。
どうしようもない飢餓感。涙がにじむほど苦しい。ふいに舌を絡めとられ激しく吸い上げられた。
龍から受けるそのキスは、麻酔のように全身を痺れさせていく。彼から激しく、強く求められていることをはっきりと感じた。けれどそんな甘い陶酔の中でも、なぜか涙が滲んでくるのを抑えられなかった。
唇が離れた瞬間にはもう、名残惜しさに喉を鳴らして目を細めてしまっていた。きっと私は龍のすべてが欲しいと無言でねだっている。
そんな私の表情を見て、龍はまた微笑む。とてもいとおしそうに。
最初のコメントを投稿しよう!