夢の余韻

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「龍、この紐をほどいて! お願いだから」  ほとんど懇願していた。早くその頬を掌で包んで自分の熱を龍に伝えたい。柔らかなウェーブがかかったその髪の毛に指を絡めたい。早く龍に触れたくて必死だった。  早く、早く!   私はひどく焦っていた。 「その前に一つだけ言わせて」  まるで聞きわけのない子供をあやすように、私の耳もとに優しく寄せられた龍の唇。  そこから零れた低い声。  その柔らかな声の響きに泡だっていた心がゆるりと、大きな温かなものに包まれた。あまりの心地よさに思わず目を閉じる。 「愛してる。今も、これからもずっと」  囁かれたその言葉が、ゆっくりと身体の中へと染み込んでいくと感じたその瞬間。がくんと風景が揺れた。
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