夢の余韻

7/7

740人が本棚に入れています
本棚に追加
/267ページ
 はっとしてベッドから起き上がった。いつもの天井が見える。まだ部屋の中は暗い。手元の目覚まし時計を見ると朝の5時10分だった。  夢の余韻が身体に残ってしばらく放心状態になる。体の細胞すべてが粟立っていて全身が熱い。私は大きくため息をついていた。 「龍……?」  けれど答える人はいない。そんな現実は私をゆっくりと夢の中から引き剥がしていく。  カーディガンを羽織って起き上がると、隣の部屋で寝ている息子の(そう)の様子を見るためにそっとドアを開けた。彼は布団を頭までかぶってぐっすりと眠っていた。それを確認して足音をたてないようにキッチンに向う。  お湯をわかして丁寧にコーヒーを入れる。まだ身体の端々が、埋もれ火がくすぶっているようにじわりと熱い。私はコーヒーカップを持ったまま、窓辺に視線を向けた。序々に夜が朝へと移ろいはじめ、暗闇が薄らいできていた。夜明けをゆっくり眺めるなんて久しぶりだ。    リアルな感触の夢。ふわふわと身体が浮いていて、まだ夢の中をさまよっているよう。 このおかしな浮遊感から抜け出すのにいつもより時間がかかりそうだった。それなのにそのことを歓迎していた。いっそこの感触をいつまでも抱き締めていたい。  ひとつため息をつくと目を閉じる。自然と龍と出会った頃のことを思い出していた。
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

740人が本棚に入れています
本棚に追加