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「じゃあ、それはそれで良いけど。あのさ、前に二人云々で暮らすだなんだって」
「は?」
「え? 言ってた、よね?」
きょとんと瞳を瞬かされて、南は記憶をたどった。そういえば、そんなことを与太話に言ったような、言っていないような。
「言ったか?」
「言ったの! もう、なんていうか、本当に、南さんってそういうところ雑だよね。雑と言うか、無神経と言うか」
無神経とまで言われると、なにが悪かったのかは分からないが多少の罪悪感は覚える。年下の子どもに言われると、とりわけ。
「悪かった、悪かった。でもべつにただの世間話だろ。おまえが気にするようなことじゃ」
「ねぇ」
真顔で遮られて、南は小首を傾げた。
「南さんのそれって素なの? それともそうやって適当に流して煙に撒こうとしてるの」
「は?」
なんだか話が堂々巡りの様相を呈している。面倒になってきて南は白旗を上げた。時東がどう思っているのかは知らないが、カウンセラーを気取れるほど気は長くない。
「じゃあ、なんだよ。なにが気に入らないって?」
「あのね、南さん。ふつう、一緒に暮らすだとかそういう話、ただの幼馴染みがすると思う? しないよね」
神妙な顔で言われたところで、意味が分からない。
「そういうの、告白って言うんじゃないの?」
「は?」
はっきり言葉にされても、やっぱり意味は分からなかった。
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