[2:南凛太朗 4月19日21時50分]

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「春風さんついでにちょっと聞きたいんだけど」 「春風?」  繰り返してしまってから、南はあぁと頷いた。ちょっと嫌そうな声になったかもしれない。 「先に言っとくけど、あいつが言ったことなら気にしないでいいからな。ほら、なんだ。一月くらいに東京で会ったんだろ」 「あぁ、うん。まぁ、会いましたけど」 「おまえのこと揶揄って遊んでただけだから、気にすんな」  勘違いさせたなら謝っといてよってあいつも言ってたし、と続けると、時東の眉間にむっと皴が寄った。 「勘違いさせたならごめんねって、あの人、絶対に勘違いさせようとして発言してるでしょ」 「いや、……まぁ、そうかもな」 「せめて否定してよ、そこは」  げんなりと評して差し支えない調子に笑いそうになったのを、お茶を飲んで誤魔化す。 「まぁ、なんだ。その、昔から人を揶揄って遊ぶのが好きな面倒なやつではあるけど、性根から腐ってるわけじゃ」 「南さん、それフォローになってない」 「……こだわりの強いやつで、妙な縄張り意識も強いから、牽制したがるんだけど。その、本心でそう思っているかというとそうでもなくて、牽制したことで自分の気を収めてるところがあるというか」 「それもまったくフォローになってない気がするんだけど。つまり昔からそうやって二人きりでつるみ続けてるって解釈で大丈夫?」 「いや、……そういうわけでも。ほら、月子たちとも付き合いは長いし」 「えり好みが激しい」 「まぁ、そうとも言うか。人見知りというか、人慣れるのに時間がかかるというか」  獣かよという突っ込みが入りそうな説明になってしまったが、つまりそういうことだ。悪いやつではない。としか言いようがない。
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