愛好者のパーティー

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信者を捲いたマダムが すれ違いざまに俺の耳元で囁いた。 「ここにいる男達のほとんどは、 働く事を知らないで一生親に甘えて生きる 金持ちの馬鹿息子。イワンの金蔓よ。 気後れする必要なんてない。 忘れないで。あなたは『皇帝』。 それにしてもあなた…… 女達に狙われてるわよ。 気をつけなさい、色男」 振り向くとマダムは、 手でピストルを作って 俺を撃ち抜くマネをした。 スーツを用意してくれたのは 恐らくマダムだ。 お礼を言おうともう一度振り向いた時には すでにどこかの実業家然とした男から 熱心に声をかけられていた。 俺はやたらアクセサリーを身につけた イケ好かない男に声をかけられた。 「君、スゴく良いスーツ着てるね。 しかもあのマダムが、あそこまで親しげに 話かけるとは隅におけないよ。 一体どんな仕事してる人なの? 今流行りのIT絡みの一発屋?」 「今は……無職だけど……」 無職という言葉に驚く風でもなく、 何故か納得した様子だった。 悪趣味なあ紫色のスーツを着た若い男が 話に加わってきた。 金の臭いがプンプンする。 「今どき、金持ってる男は あくせく働いたりしないよね? 金持ちになりたけりゃ働かない事さ。 汗水流して働くのは底辺の奴等だけだ。 奴等は俺達の為に働いて、 死ぬまで貧乏なんだ」 ── お前らの為に 死ぬまであくせく働くだと?冗談じゃない! 思い上がるのもイイ加減にしろ。 何か言ってやりたい。 俺は拳を硬く握り締めた。 そんな俺の心理に全く気付かない様子で 紫は話を続けた。 「それはそうと…… 今日は凄いショーが見れるかもって 聞いたから大枚はたいてこんな所まで やって来たのに…… 普通のパーティーじゃないか」 ── 凄いショー? 俺はそんな事一言も聞いてないぞ。
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