ジャガイモと拳銃

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案の定、黒豆はボンネットの上で 眠ったままだった。 俺は昨日と同じように 運転席の窓ガラスをノックして 恐る恐るボンネットを指さした。 男は昨日と全く同じように窓を開けた。 俺はすかさず、アルミホイルを男に手渡す。 男は条件反射で受け取ると しばらくそれを無言で見つめて、 窓を閉めた。 黒豆を回収して 昨日と同じように家へ帰った。 ところが昨日とは違って、 俺の背後で車のドアが閉まる音が聞こえた。 男が……ついて来た。 何メートルか離れて俺の後ろをついて来る。 ……デカイ……。 運転席にいる時はわからなかったけれど、 2m位あるんじゃないだろうか? 明らかに警察関係者ではない。 むしろその対極にいる者の雰囲気が漂う。 俺は気持ち急ぎ足で 自分の部屋のドアを目指した。 ドアが見えた。走り出したいのをこらえる。 ドアを開けて黒豆を部屋に放り込み 自分が玄関に足を踏み入れた瞬間、 男がドアに足を突っ込んできた。 男は玄関で靴を脱いで丁寧に揃えると、 勝手に部屋に上がり込んだ。 テーブルに銀紙を置く。 正座で姿勢正しく ジャガイモにかぶりついている。 呆気に取られて玄関に佇む俺を無視して 黒豆がトコトコと男の膝に乗っかり 丸くなった。 ── オイ!寝ぼけて俺と間違えてるのか? 黒豆!それは知らない……アブない男だぞ! 俺は全神経を集中して 黒豆にテレパシーを送る。 黒豆は大きなあくびをすると 熟睡体制に入った。 ……通じてない。 俺の唯一の財産…… 冷蔵庫にある金貨も気になる。 アレを持っていたが為に 命と引き換えになる危険すらある。 意を決して、俺は男に話しかけた。 「あのぉ……」 男は我に返って ジャガイモを食べる手を止めた。 ゆっくりとこっちに振り返る。 「美味い……」 男は黒いスーツの内側をゴソゴソ探ると テーブルの上にそれを置いた。 ゴトン……重量感がある金属の塊。 ── えっ?……マカロフ? 勿論テレビとか映画でしか見た事はない。 エアガンだよな? 本物じゃないよな? 銃刀法はどうなってるんだ?
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