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周囲に焦げた臭いが充満している。
ぷすぷすと音を立て、何かが燻る音に、耐え切れずに「バン」と乾いた音を立てて爆ぜる音。そうしてまた、濃くなる、焦げた臭い。
見渡す限り周囲には骸が転がっていた。否、世間では此の光景を「死体の山」とは呼ばないのだろう。さしずめ「瓦礫の山」といったところか。
「……くそ」
そんな荒れ果てた地に、また何時小規模とはいえ爆発が起きるかさえ定かでない場所に、1人立ち尽くすのは未だ幼い、10代前半の少年。
幼い姿形といい、薄汚れてしまっているが物の良い服装といい。とてもではないが、世間が忌み嫌う「瓦礫の山」に立つには不似合いだ。
先程、他でもない此の少年が漏らした毒も、同様に。
「くそ!畜生!!許さない……絶対に許さないからな」
ぷつりと糸が切れたかの様に少年は其の場に座り込む。上等な服が更に汚れてしまう事など、まるで気にならないと言わんばかりに。
両膝を着き、しかし胸中で燃える“ソレ”は少しも鎮まっていないのだと、どころか今此の瞬間でさえ火勢を増しているのだと言う様に、少年の双眸は暗い炎を燃やしていた。
小さな手を、恨み言と共に幾度も地面に打ち付ける。もう片方の手には、黒いレースがあしらわれた、緑色のリボンを大切そうに包み込んで。
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