此れは、大切な“人”の為に。

全て終わった日の、後。

　×年前。世界の人口は減少し続けていた。
　とは言え、厳密に言えば其(そ)れでは正しくない。医療は進歩し、「健康寿命」と呼ばれるものは前時代よりも格段に長くなった。つまり減少こそしているが、其れは極々緩やかなものであり、誰かが問題視するものではなくなっていた。
　しかし史実として問題視されたのだ。なんせ減る速度が至極緩やかになっても、“増えない(新しく生まれない)”のだから。
　幾ら健康寿命を引き延ばせ、医療が格段に進歩しようと、不老不死を手にしたワケではない。増加の方が今一つであれば結局人口は減少するのみであり、また、若い力が不足しているというのは、日常生活の大半さえ機械化される様になった現在に於(お)いても不便だと言えた。

　其の対策として誕生したのが、少年少女の姿をしたアンドロイドとガイノロイドである。

　昨今人工知能やアンドロイドの進歩も飛躍的であり、先述のアンドロイド達も其の例に漏れない。有り体な言い方ではあるが、本当に人間の子供の様であり、増加しない人口に悩まされていた政府は積極的に其の対策を取り入れていった。
　一般家庭にも広く普及し、長年此の国を悩ませた少子化問題は解決したかに思われたのだが。

　過ぎたるは及ばざるが如し。

　つまりは増え過ぎたのだ。
　元より人口が減り難くなっていた事もあって、人口はあっと言う間に飽和した。
　さて、となれば、どうなるか。