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その涙の出所がおれであることを思うと忍びなくて、けれどその涙を止める言葉は持ち合わせていなくて、おれは飾り気のない部屋をじっと見渡すことしかできなかった。
*
やがて冬の夜が静かにふくらんでいくなかで、嗚咽すら聞こえなくなると、穏やかな寝息が部屋を包んでいった。
どうやら光は泣き濡れて眠ったようだ。
おれは膝に手を置いてそっと立ちあがり、寝室から毛布を取ってきて掛けてやる。
額から前髪がさらさらとこぼれ落ちた。
半開きの口元は涎で濡れているが、ほかの表面はかさかさにひび割れている。
おれはその無防備な顔に、そっと自分の顔を近づけていく。
光。
おれがこの世界を信頼しているのは、好きでいられるのは、この世界のどこかにおまえがいるからなんだ。
世界には温かな陽だまりがいつも広がっている。そう信じる気持ちをおまえがくれるんだよ。
他人を想う気持ちは祈りそのものだ。
おれの祈りがちゃんと届いていることをおまえがいつも教えにきてくれるから、おれはこの世界で生きていける。
おれは自分の唇をそっと光へと押しつけた。
めくれあがった薄皮がちくりと刺さり、すこしくすぐったかった。
じっと見つめていると光が身じろぎして左手が滑り落ちた。
おれはびくっと肩を跳ねさせて後ずさった。殴られるかと思ったからだ。
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