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次の駅へ向かう電車のけたたましい車輪音が、糸を引きながらトンネルの向こうへ消えていく。
「久しぶりだな、蒼」
「光、良く来たな」
おれたちは再会の挨拶を白い吐息で交わらせると、相合傘をしながらアパートへと向かった。
先月、光から久しぶりに連絡が届いた。
大学の研究室も一段落したから、おまえのところに遊びに行っていいかと打診されていたのだ。
均したように平坦に積もる新雪に二人分の足跡を刻む。ざくざくと小気味よい音が耳をくすぐる。
肩を並べる光がちらりとこちらに視線をくれた。
「しかしおまえ、えらく薄着だな」
「おれ、寒さには強いんだ」
「なんだ、それ」
土で汚れたエントランスをくぐり抜け、前日に片付けておいた部屋へ招き入れる。
荷物は部屋の脇に置くように指示した。
光は電車での座りっ放しが堪えたのか、あらゆる関節がパキパキと軋んだ音を立てた。
「ふう、疲れた」
光は濡れた靴下をビニールに詰めると、コタツに足を突っ込んで電気カーペットにごろんと寝そべった。
すると腹の虫がぐうっと暴れ出す。
「飯、食ってないのか」
「まだ。蒼のおすすめのお店を教えてくれよ」
「線路沿いのさきに、うまいうどん屋がある」
「良いね。それで決定」
おれたちはコタツでしばらく暖をとってから出掛けることにした。
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