* 六花の涙 *

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せっかくなら銭湯にも行こう。 テレビの地方ニュースを眺めながら、そんな段取りも決めた。   外に出かける英気を十分に養うと、着替えを詰めたビニールバックを片手に玄関口に向かった。 扉を開けるとみぞれまじりの強風が出迎え、おれの眼鏡が一気に凍りつく。 寒さに辟易(へきえき)した光はおれの服の裾を引っ張った。 「行きたくねぇ」 「おれの料理でもいいけど、保証はできない」   おれは光のしかめっ面を横目に見ながら、もう戻れないように部屋の扉の鍵を締めた。            *     
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