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集団が入ってきたようだ。
どこかで聞いたことがある声だと思っているうちに、背中に視線が集まるのを感じた。
「あれ、蒼じゃねぇの」
予感は確信に変わった。
ふりかえると同級生の四人組が腰にタオルを巻いた姿で立っていて、こちらに奇異の眼を送っていた。
おれの横にだれかいることが珍しいのか、湯をかき混ぜる光の様子を窺っている。
おれは四人の顔が集まる中央あたりに視線を固定して黙っていた。
なにも言うつもりはなかった。
すると光がおれの視線のさきにだれかいることに気がついて挨拶を切り出した。
「どうも、はじめまして。蒼と幼馴染みの光です。あれですか、蒼とおなじ大学の人たちですか」
相手の懐に入ろうとした光だったが、四人組は困ったようにたがいの顔を見合わせている。
「……どうも」
だれからともなくそう言うと、なんともいえない空気を背負ったまま洗い場へと流れていった。
おれたちのあいだに浮かんでいた微妙な雰囲気。
それを感じとった光が濡れた髪で首を傾げる。
「あれ、友達じゃねぇの」
「いや、ただの同級生だ」
「……そっか」
おれの悪い癖が治っていないことを悟ったのだろう。
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