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「蒼はさ、仲良い友達とかいるの」
コンビニで缶チューハイやポテトチップスを買い込み、ダラダラとコタツで酒を煽っていると、ソファで横になる光が尋ねてきた。
おれは缶を振って中身が入っていないことを確認すると、両端をへこませて透明ゴミ袋に投げ込んだ。
「いないな」
「サークルとかバイトとか、ほかの奴との関わりって持ってないのか」
光の口調が急に熱を帯びていくので、おれはなにかへまでもしたかなと焦るくらいだった。
「なにも」
「暇なときとか、なにしてんだよ」
まるで氷の剣を喉元に突きつけられるかのようだった。
おれは新しい缶のプルを開けるのをやめて考え込む。
「そうだな。小説読んだり映画鑑賞したり。一人でずっといるな」
「……やっぱりか」
光は息を吐いて天井を見上げた。
「なんか以前より、雰囲気が暗いんだよなぁ」
「そうだったか。気がつかなかった」
「蒼は危ういんだよ。やっぱり他人と一緒にいるのが、いやなのか」
おれは正直に首を縦に振ると、光の眼が悲しい色に染まった。
それがつらかった。
自分だけの感情なら平気だ。
けれど光が傷つく瞬間を見ると平静を保てなくなる。
「傷つかないでくれ、光。おまえが悪いんじゃない」
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